エッセイ 1081:来年度の経済運営

突然のことで驚いたが、アメリカではおおての銀行が負債の増加で経営が難しくなり、破綻に追い込まれたとの報道があった。アメリカ政府が資金援助などで救援を宣言しているが、この銀行破綻が経済に与える影響は半端ではない。
一方で、スイスでも第2位のクレディ・スイスぎんこうが危機に陥り、トップのUSBが買収するとの話が飛び交っている。
急激に始まった国際的な金融機関の混乱は、世界的に更なる経済をマイナス方向に導くことは間違いない。

このような大変動の状況は、全くの予想外であった。
既に、ダウ平均は連日大幅に下落しており、その影響を受けて我が国市場における日経平均株価も、一旦上昇したが、下落の方向に向かっている。
我が国では、投資家の行動が勢いを欠く程度であれば問題は拡大しないだろうが、主要企業の経営の先行きは、全く不透明といってよい。

然も、昨年末からの物価高、円安傾向は国民の生活を脅かしている状況に如何に対処するかは、極めて難しいテーマと思われる。岸田首相は、来年度からの賃上げを宣言し、経団連もこれに対応して、ベースアップ交渉に際して、殆どの企業が満額回答をしたのは、明るい兆しではあろう。そして初任給のレベルも上昇するようである。
この時期に、日銀総裁が交代することもまた注目に値する。

私は、現在の黒田総裁に関しては、彼の就任時から経済見通し、超低金利政策と2%インフレ目標の適応性、自己主張をまげない姿勢などに、疑問をもちつづけていた。その問題に関しては、文芸春秋4月号に書かれた元日銀理事の山本謙三氏による批判、解説文が。私の10年間に抱いていたこの疑問をすべて解いてくれて、安堵した次第。

これからの経済運営に関しては、植田新総裁に柔軟な取り組み姿勢と、これに対応する岸田内閣の施策に期待致したい。


(令和5年3月23日)