エッセイ 114:格好良い生き方

確か,9日の日経新聞でしたか、ソニーが前会長の大賀典雄さんへの退職金を16億円支払うことを決めた、とのニュースがあった。

この不景気の最中、日本ではニュースになるほどの金額ではあるが、大賀さんの過去の功績を考えれば、決して多過ぎることだないであろう。これが、アメリカの企業であれば、恐らく功労金として、100億円を下ることはあるまい。
GEのウエルチ前会長と比較しても、歴代のソニーの社長の功績は、優るとも劣る事は無いと言えそうだ。

オペラ歌手でもあった大賀典雄氏に関しては、その生き方の素晴らしさについて、このHPの「趣味悠々92」で書いたので、参照されたい。
が、その大賀氏が、その退職金16億円全額を、軽井沢町に寄付すると言う。それも、軽井沢には、音楽堂が無いので、その建設資金に当てるため、という。
何と言う格好の良いセリフと格好の良いお金の使い方であろうか。誠に感動的であり、同じ男としてなんとも羨ましい。

この世知辛い世の中、政治の世界ばかりでなく、経済界に於いても業務上背任とか、横領とか、金に纏わる汚い話が蔓延している中で、久し振りに清々しい話である。男がこの世に生まれて、自分のやりたいことをやり、その分野で素晴らしい業績を挙げ、名誉と地位を獲得して、勇退する。それだけで、100点満点の人生ではないか。
更に大賀氏は、経営者としての業績もさることながら、プロの音楽家としても、趣味の分野でも、自家用の飛行機を駆使したり思う存分の活躍をされた訳である。
それに加えて、退職金全額をこのような形で寄贈されるとは、これ以上素晴らしい、爽やかなの男の花道はない。

巨額の不良債権を置き去りにして退職した銀行経営者の退職金も、ほぼ同額であろう。彼等にとって、耳が痛い話か、迷惑な話か知らぬが、他山の石くらいにはして貰いたいものである。

今回の大賀氏の行為は、ソニーにとっても、大変名誉な話のように思える。出来得べくんば、株式会社ソニーとしても、同額程度の金額を軽井沢町に寄贈して、どうせのことなら、毎年夏場のコンサートを始め、若手音楽家の育成などに活用されるような、世界に誇れるような、そして後世に残る立派な音楽堂を建設して貰いたいものである。
如何であろうか。


(平成15年6月19日)