エッセイ 336薬害訴訟問題


薬害によるC型肝炎感染者の訴訟問題に関して、最近政府が漸く責任の一端を認め、患者との和解交渉のテーブルに付こうとしている。

周知の如く、C型肝炎の感染は血液を媒体にしており、過去には輸血などによって感染が広がっていた。そして、治療剤としてのフィブリノゲンが危険であるとの論文がアメリカで発表されて、禁止措置がとられたのが、1977年であるという。

当時のフィブリノゲンを製造していた製薬会社、ミドリ十字は、この論文を翌78年には認知していて社内回覧を行っていた由。その後10年を経過して、青森での大量感染の原因がフィブリノゲンと判明した。その後、厚生省は、漸くフィブリノゲンの製造販売の差し止めを行ったが、過去の薬投与の記録、カルテなどをミドリ十字に調査させながら、感染者や感染可能性のあるものに対して、何等の通知や治療の必要性に関する措置をとることをしなかった。

誰が如何考えても、国と製薬会社に責任があるのは明白であろう。舛添厚生労働大臣が患者との和解に動き出したのは、遅きに失した感があるが、国の責任を公に認めた初めての大臣である。

舛添大臣が就任後、失われていた筈の資料の再調査を命じ、改めてフィブルノゲン投与の記録の一部が判明した。それも、地下の倉庫にあったファイルが偶然に発見されたとう。全くふざけた話である

また、
患者との和解に関して、一時金を支払って解決しようとの動きがあるそうであるが、これなどは、全く問題の本質を理解していない。
政府は、先ず感染者に対して謝罪を行い、今後の治療を全面的にバックアップするのが筋であろう。そして、勿論その費用は全額国が負担することが当然であろう。

当時の厚生省の局長、部長、課長等の管理職にあった者の罪は極めて重いことを再認識させねばならない。その為にも、彼等の氏名を公表して、何らかの罪を問うことは出来ないであろうか。仮令、数百万円の罰金であっても、である。

他にも幾つもの例があるが、日本の役人が常に全く責任を取らない、という悪習をこの辺で打破することを考える必要がある。間違ったことを行った罪は勿論のこと、特に為すべき事を意識的に行わない、という不作為の責任に就いても十分に問わねばならない。

先進諸外国が、早い段階で製造禁止にした薬物を、その情報を知りながら、何等検討も行わず、禁止措置をとらない行為などは、目前の火災に気付きながら、それを消そうともせずに手をこまねいて見ているのと同じことではないか。
然も、その不作為の行為に、製薬会社に対する配慮が働いたとすれば、目前の火災に油を注ぐに等しい行為といえよう。

国家公務員といえども、このような行為が公然と行われていて、その後任者もこれを黙認するが如き、悪徳者を国民は見過ごすわけには行かないのである。

福田内閣は本件の早期解決に全力を挙げてもらいたい。


(平成19年11月22日)