エッセイ 395食料問題など


本欄で取り上げた経済危機や派遣労働者の問題は、連日国会討論や新聞テレビなどで、政治家や評論家などの議論が侃々諤々と続いている。然し、ピントの狂った意見も散見される。特に麻生総理を始め、政府与党議員は問題の本質が判っていない人が多く、枝葉末節の議論に終始しているのは全く情けない限りである。
例えば、定額給付金を大臣が受け取るか否かなどの論議ではなく、このような給付金が果たして景気対策として効果があるのか、またそれを支給すべきか否かの議論が先であろう。この2兆円は景気対策なのか、貧困者救済なのかも不明のまま、衆議院を通過してしまうのは聊か忍び難いものがある。
今回は、この問題を離れて、それ以外に就いて私見を述べたい。

今回は、日本の食糧問題に絡んだ話題を2.3 論じたい。
先ず、クローン牛の研究である。全く同じDNAの牛を複数作るような研究等は私は本能的に、自然の摂理に逆らう人間の浅知恵と不遜な態度の表れであり、研究の方向が間違っていると思われて仕方ない。
この研究が、病理や医学の研究を目的とするなら未だしも、人間が食料として美味い肉を生産する為だとなると、最早許しがたいものを感じる。

人間が食うために牛を生産していることが、そもそも自然の摂理を超えてしまっている。それに、味の良い肉の牛なら、今でも十分あるではないか。それにソコソコ喰えれば十分であり、寧ろ味にばらつきがある方が遥かに自然であろう。

過去には、人口の過度の増加に対しては、神は疫病の流行や戦争などでその調整を図ってきた。人口増加の傾向に対処する為の食料問題は、極めて深刻であり、未だに解決の道筋は付いていない。世界的な飢餓を救うには、小麦や大豆、トウモロコシなどをアフリカやアジアで大量に生産する具体策などの研究を急がねばならない。

それに比べて、味の良い肉の為のクローン牛の研究などは、この際中止しては如何であろうか。

次に、今年もまた日本の調査捕鯨の問題がクローズアップされてきそうである。以前にもこの問題について私見を述べたことがあるが、この問題では、日本はあくまで世界では少数派であり、今年も国際的な非難を浴びることになりそうである。
日本の主張は、鯨保護の為の調査が必要、との事であるが、実際には調査の枠を遥かに超えた大量の捕獲を行っており、商業捕鯨と言われても仕方ない状態である。然も、鯨肉が市場で売られているのであれば、実際の反論は難しい。

この際、多少不本意ではあっても、相手の主張を呑むことも大人の対応ではないだろうか。農水省も捕鯨業者保護から、鯨の保護へと方向転換をすべき時期であろうと考える。その結果若しも鯨が増えすぎたならば、それはそれでよいではないか。この際南氷洋の捕鯨から撤退することを大々的に宣言する案を提案致したい。

次に現状の農業の改革案である。政府の減反政策と農業人口の高齢化により、休耕田は年々増加している。
食料自給率の回復を目指して、農業の再興を図っては如何であろう。休耕田の活用、都市労働者の農業への転向、失業者の救済、若年層の農業への誘導、等を一括して、農業規模の拡大、生産性の向上、有機農業の実践を包含した仕組みと、必要な法制度改定を行い、来年度中の実現を目指すのは如何であろうか。
少々夢物語に近いし、選挙の票にはなりにくいかも知れぬが、現状を打開する為に志のある政治家と、NPOの参入を期待したいものである。

今回の金融危機により、目先の景気対策ばかりに捉われ易いが、人間が当面する根本的な問題をジックリ考え続けることを忘れてはならないと考える次第である。


(平成21年1月15日)