エッセイ 402郵政民営化の評価


小泉内閣が鳴り物入りで推進した郵政民営化に対して、最近は麻生首相を初め自民党内でも批判的な意見が表面化している。
これに呼応して国民新党などが、負の部分などを強調しているが、そのような批判は正しいのであろうか。。
この見解は大筋に於いて誤っていると断定せざるを得ないので、郵政民営化が始まってその成果を評価するには今尚時期尚早ではあるが、この際その大綱と意義を再確認したい。

そもそも、郵政民営化の最大の焦点は、郵便貯金と簡易保険の総額が凡そ300兆円に達し、その資金の使途が制度上国会の審議もなくして、当時の郵政省が自由に決めて資金運用をしていたことにメスを入れるものであった。
国家予算が70兆円に満たない時代に、一省庁がこれほどの巨額の采配を自由に行っていた事を放置していることが大問題であったのだ。その運用が適切であれば兎も角、相当に怪しげなものがあったことを忘れるわけには行かない。

「かんぽの宿」の如き施設を全国に建設して、その利権に多数の輩が群がっていた例を見れば、これを改善することが政治の命題として当然のことであるのは言うまでもない。しかも2400億円を掛けた施設を100億円で売却しても、何等責任を感じないような組織などを温存する必要が何処にあるだろうか。
如何なる失敗をしても責任者が出ない。これが官僚組織の大きなガンなのだ。このような組織を解体して民営化することは当然であり、それを推進した小泉内閣を国民の大多数が支持したが故に、前回の総選挙で自民党は大勝利を得たこと思い起こして貰いたい。

麻生総理は、当初は「この民営化を行った担当大臣は私であったことを忘れないで貰いたい」と述べていた。然るに先月の国会では、「元々私は郵政民営化に反対であった。その為これを担当したのは竹中大臣であって、私は外されていた。濡れ衣を着せられては面白くないので、この点をはっきり理解して欲しい」と、前言と正反対の発言をしたのである。濡れ衣とは、民営化が丸で犯罪行為の如き表現である。

また、「その後最終的には賛成して、大臣として署名した」とも述べて、「郵政民営化の際に国民の大部分は4社に分割することなどは知らなかった」との発言がまた物議をかもした。国民を愚弄するにも甚だしい。然も、この政策を国民に周知させるのは総務省であり、その大臣であったのは他ならぬ麻生太郎氏であったのだから、何とも情けない人が総理大臣になったものである。

郵便貯金、簡易保険の資金運用の本来の目的とは別に、この資金をかんぽの宿を始めとして、公社や法人を作り、其処を郵政省官僚の天下りの温床として活用していたことも忘れてはならない。民営化反対論者はこのような機構をそのまま放置するを許容するのであろうか。

民営化反対論者の論理は理解に苦しむ。反対の最大の理由は過疎地に於ける郵便配達や郵便貯金制度を温存すべし、との意向である。これは国鉄の赤字路線を継続せよ、との意見と同じで、過疎地対策として理解は出来るが、現実のコスト面では成り立ち得ない。寧ろそれを口実に、長い間の利権構造やかんぽの宿などの施設建設を巡る利権の温存を主張しているに過ぎない。

郵政公社を4分割した各社はそれぞれ利益を挙げ始めている。
国鉄の民営化は見事に成功下見を結んでいる。
また、旧電電公社を民営化し、競争相手にも事業認可したが故に、国際電話料金は一桁以上も安くなり、携帯電話業界の繁栄を招いていることも思い起こして貰いたい。
これと同じく、この郵政民営化という新しい制度が国民生活に根付いてくれば、旧来の郵政公社にない新しい分野を開拓し、且つ遥かに効率の良い会社に育って行くに違いない。

当初国鉄民営化や電電公社の解体に断固反対した人たちの意見を聞いてみたいものである。


(平成21年3月5日)