エッセイ 505:政治の貧困


民主党政権は、予算案審議を前にして小沢問題に絡んだ議員16人の会派離脱、議員辞職、更に加えて前原外務大臣の辞職と、混乱が続いている。

子供の頃から親しくしている中華料理店の女店主の献金が毎年5万円で、その人が在日であったからといって、外務大臣が辞任するほど国家の利益を損なうとはとても思えない。それより、先進8カ国の外相会議、韓国との外相会議などを過密な日程が控えている時期に大臣が交代する方が遥かに国益を損なうのではないだろうか。
これ等野党の政権追及の一連の動きを見ていると、我が国政治の貧困振りばかりが目に付いて何とも情けなくなる。

現在世界の情勢は、チュニジア、エジプト、リビアなど中近東諸国の政権を根底から覆す大きな流れが、連日報じられている。この流れは、今後更なる不測の展開も予想されている。この変動は独り中近東情勢の変化ばかりでなく、欧州、アメリカ、そしてアジア諸国にまで影響を与えている。今後の原油状況の推移だけでも、容易ならざる事態である。

中国に於いても反政府デモの規制に躍起となっており、反政府デモが他の国の如何なる独裁政権に飛び火しても不思議ではない。また、原油の高騰を始め、食料危機など世界経済に及ぼす変化は無視できないし、日本政府には、これ等の国際情勢の変化に対する適切な、且つ素早い対応が求められているのだ。

我が国がこの時期に涼しい顔をして予党内の抗争をしている時期ではない。まして況や、この時期に外務大臣が交代する局面ではありえないのだ。

国内状況を見ても、財政再建、年金問題、医療問題、子供手当、沖縄基地、TPP加入問題てなど、早急に処理すべき問題が目前に山積しているではないか。政治家達は、これ等の状況は他人事なのであろうか。
勿論民主党内の抗争は論外であるが、徒に個人責任の追求や辞職要求を突きつける野党の言動にも怒りを禁じ得ない。

財政赤字、年金問題、医療問題、基地問題等、民主党が現在取り組んでいる問題の大部分は、長期に亘る自民党政権の負の遺産ではないか。己の失政を棚に上げて、他人の責任追及ばかりに熱を上げる政党に、国民の支持が移ることなどあり得ないであろう。
寧ろ、この際与野党が一体になって、諸問題の解決に向けて協力することが、真に国民に対する姿勢ではないのか。

先ず外交問題に関しては、中東諸国の激動に対する日本の姿勢は、国内で余り意見は割れない方が望ましい。与野党の建設的な議論を勧めて貰いたい。特に原油輸入や食料品問題を今後如何に解決してゆくかは、国民全体の問題なのである。

財政再建に関しても、待ったなしである。麻生内閣がばら撒いた25000円というのは、何であったのだろうか。今更ながら自民党の無策ぶりを象徴しているではないか。
折角自民党が唱えた消費税10%に対して、菅首相がこれを参考にすると、意思表明をしたのであるから、民主、自民両党はこれ点で同意できる筈である。大綱で合意出来れば詳細に関しては、話し合いで合意点を見つけることは、その気になれば決して出来ないことではない。

同様に医療問題にも与野党が協議して合意点をみつけることは、決して難しいことではない。
基地問題も自民党政権時代にアメリカと結んだ基地協定を民主党政権が、これを継承するというのであるから、この線で進めるしかないではないか。嘗て政権を担当した自民党であるが故に、民主党に対しての協力は極めて意義深いことであろう。

これ等の政策遂行面で、自民党が大人の対応を示してゆけば、国民の政治に対する関心が戻ってくるであろうし、支持率の回復も見込めるかも知れない。
現在の谷垣総裁、大島副総裁、石原幹事長の自民党幹部は、一様に民主党幹部の個人攻撃に専念しており、自分達の政策実現に関しては、全く関心を示していないのは、何とも情けない醜態ではないか。

野党各党は、衆議院解散を求めているが、頻繁に総理大臣が代ることによる日本政府の国債信用度の下落に関して、野党はこれを全く無視するのであろうか。

また、次の総選挙前に実現すべきことに、憲法違反になっている選挙区に於ける議員定数の是正問題がある。1票の格差が4対1、5対1 というのでは、裁判所の判決を待つまでも無く、何が何でも可笑しいではないか。
2対1を超えれば、憲法の種子を逸脱するのは明らかである。
人口の変遷は避けられないので、人口の変化によって自動的に議員定数が決まる数式を採用すれば、毎回の不公平は未然に防げる筈である。メディアを含めて、政治学者もこの方式を主張しないのは何故であろうか。私には理解出来ない。この問題の憲法違反裁判が各地で5,6箇所も行われているが、これまた全く無駄な作業であり、100%無駄な経費ではないか。裁判をしなくて済むならば、間違いなく経費削減となる。早急なる対応を求めたい。
この問題に関しては、メディアも連日取り上げるべきではないか。

また、現在のように衆参両議院のネジレ現象続くようであれば、一党が掲げたマニフェストは実行出来ない。また、参議院が所謂良識を放棄し続けるのであれば、私は参議院無用論に組みしたい。現行のやり方では250人の参議院議員の歳費、諸経費、政党助成金、一等地の議員宿舎など全てを含めると、年間数千億円の経費が削減出来るのである。

参議院がなくなれば、衆議院の4年の任期一杯与党の政権が維持出来るし、そうすることによって総理大臣の交替を頻繁に行う悪弊から脱することが出来るではないか。

この際、これまでの悪弊に捉われず、政治の原点に返った抜本的な政治改革を行うべき時期に来ていると思えてならない。


(平成23年3月10日)