趣味悠々 892曲目選び


毎月2か所で行っているオペラ鑑賞会の演目選びには、それなりに気を使っています。今回は、天皇の退位、新天皇の即位があり、年号も平成から令和に変わった初めの月であります。
このような時代の転換期に相応しい曲目は何か、と考え、ヴェルディの傑作「アイーダ」をやることにしました。それは、スエズ運河が開通し、それを記念にて建設されたカイロ・オペラ劇場のこけら落としの曲として、ヴェルディが依頼されて作曲したのが「アイーダ」だったのです。
そんな訳で、欧州では何かの記念祭の際に行うオペラの演目としては、この「アイーダ」が選ばれて演奏される機会が多いようです。

ご承知の通り、「アイーダ」は壮大なオペラなので、実際の舞台にも、馬が出たりしますし、競技場でこのオペラが行われる時には、象が出演したこともあります。
従って、現代でもメトロポリタン歌劇場等の演出では、舞台装置も豪勢にして見栄えを良くし、衣装にも古代のデザインで凝ったものを使っています。

そんな訳で、今回は一般の歌劇場ではなく、アレーナ・ディ・ヴェローナという、イタリアのスイスに近くでローマ古代の時代に建設された円形の闘技場で行われた屋外演奏による「アイーダ」を皆さんに楽しんでもらうことにしました。

ご承知の通り、ヨーロッパやアメリカに於けるオペラの演奏会は、毎年10月半ばから翌年の春、4月頃までの冬季がシーズンです。夏季にはやりませんので、歌手たちはその間休暇を兼ねて南半球のアルゼンチンなどに行き、ブエノスアイレスのテアトル・コロンと呼ばれ、パリオペラ・ハウスを模して造られた歴史ある立派な歌劇場ですが、そこに出演したりしています。昔のことですが、私も数回は、此処で一流歌手たちのオペラを楽しませてもらいました。

余談が過ぎましたが、アレーナ・ディ・ヴェローナには、私は行ったことがありませんが、音響は素晴らしいとのことです。本来屋外の闘技場ですので、毎年行っている真夏の6,7,8月のオペラ祭りは、通常は季節外ですが、オペラ・ファンの人気を呼んでいるようです。階段状の石に座るので、皆座布団かクッションを持って出かける由。

そして、カラス、テバルディ、ステファーノ、モナコ等を始め、過去の一流歌手と言われる人は、皆ここに出演して一流と認められたとのことです。
そして、アレーナ・ディ・ヴェローナでこれまでに演奏されたオペラ演目で圧倒的に多いのが「アイーダ」なのです。今年も「アイーダ」は6,7月に3回の演奏会が組まれています。

そういう訳で、時代の変わり目・令和時代のスタートを記念して、今回は始めは未だ明るい円形競技場「アレーナ・ディ・ヴェローナ」が夕闇と共に次第に暗くなってゆく屋外オペラ・ハウス、その壮大な景色、舞台装置、アリアやデュエット、コーラスに加え、随所に出て来る踊りの数々を鑑賞して戴きたいのです。これぞヨーロッパでの最高の文化遺産と言えましょう。


(令和元年5月9日)