趣味悠々 964:文化の日


11月3日の朝6時30分、NHKテレビで現在西宮文化センターの音楽監督・指揮者として活躍中の佐渡裕氏のインタビュー番組がありました。このコロナ感染時期に休演になってしまった幾つもの音楽会に向き合って、彼が指揮者としての考えた方を述べていました。
それを見て感じたことがあります。

コロナ感染で中止になって、演奏機会のないオーケストラのメンバー達は困っていました。彼等を集めて、演奏会を何かの形で実演にこぎつけたいとの思いで、それを実現した話が中心でした。大勢のメンバーで演奏するリヒアルト・シュトラウスのアルプス交響曲を、西宮文化センターの舞台を少し広げてまでして行った演奏会だったそうです。
観客数は、通常の半分以下に抑えたそうです。私は行けませんでした。

私は、西宮文化センターが阪神大震災の復興行事として建設されて以来、ワイフと共にこの定期演奏会のメンバーになっています。が、この3月以降の定期演奏会は全て中止になっています。今期から来期にかけてのスケジュールも頓挫したままです。

佐渡氏のコメントでは、一般論として考えると音楽界での演奏者たちは合唱団メンバーも含めて全員がバラバラに生きているのだ、と強調されていました。
個人個人が生まれも育ちも違い、国籍も異なれば、宗教や学歴も違い、まして日常生活は、皆がそれぞれ環境に応じて独自の生活を送っていること。
そのメンバーが集まって、一つの音楽を演奏して、その演奏時間の間は共通の音楽の中に身を置くことの素晴らしさは他の芸術には見られないことを強調していました。そのバラバラな人達が演奏する音楽を一つに纏めるのが指揮者の役割なのだ、と言うことを、このコロナ期間中に改めて再認識したとのことでした。
そして聴衆の人達もまた個別の生活をしている中で、この一つの曲を皆で鑑賞する素晴らしさを、この際認識して欲しいと・・・。

それを念頭に、今回行った「アルプス交響曲」を改めて聴いて欲しいとのことでした。
この交響曲はアルプス登山の曲です。夜山小屋を出発して、夜明けのアルプス登山。森、滝、牧場、氷河を経て、頂上の展望を味う。その後、霧の発生、雷雨と嵐の襲来を受けて、下山、日没、夜の終結まで。

佐渡氏の話を聞いて、音楽をそのような視点で考えたことが無かったのですが、その主張に納得したので、それを念頭にこの曲に挑戦です。

早速、朝食後、手持ちのCDでショルティイ・ウイーンフィルの演奏でアルプス交響曲を、じっくり聴きました。
ところで私は、マッターホルンには3回行きましたので、アルプスには愛着があります。最初は欧州での仕事の合間にイタリアのミラノから汽車に乗って独りで行って、その偉大で崇高な姿に感動したのです。2回目はワイフを連れて、自分でコースやスケジュールを計画。チューリッヒから汽車、ケーブルなどでインターラーケン、グリンデルワルド、ツエルマット等を訪問。
ワイフはこの時の素晴らしさを親戚に自慢したので、3回目はワイフの姉夫婦など3家族を連れて行く羽目に陥りました。

その時の天気にも恵まれた光景を思い出しながら、この曲をジックリ聴いて佐渡裕氏のいう音楽の意義、素晴らしさを、改めて感じた次第です。
音楽は素晴らしいですよね!!

それが今回の文化の日でした。

(令和2年11月5日)