趣味悠々 870:オペラ雑感


秋から来春に掛けては、欧州、アメリカ等北半球ではオペラのシーズンです。今年もニューヨークのメトロポリタン歌劇場でも10月からのシーズンが始まりました。
私も昔、メトロポリタン歌劇場でナマのオペラを3回程見ました。隅っこの席でしたが感動したものです。
メトは今や世界に冠たるオペラハウスですので、指揮者や主演歌手などの演奏家は勿論、コーラス、舞台装置、衣装等にも十分なお金を掛けていますので、膨大な経費が掛かってしまいます。
他所のオペラハウスでは、経費を切り詰め、衣装代も節約、舞台も現代化しているのに比べると、メトは一段と光り輝いています。

その莫大な経費を回収する為に、メトは14年ほど前から毎シーズン10品目の上演オペラを映画化して、それを今では70ヶ国で上映させています。日本でも、今年も北は札幌から南は福岡まで、19か所で、この10品目を順次1週間ずつ上映します。何処も満員に近いようで、今年は東京では5か所、神奈川では3か所に増えたようです。単価も3600円もするので、安くはありませんが、仕方ないでしょう。
これによって、メトの収入を確保して贅沢な演出が出来る訳です。

先週、早速今年開幕の第1作、「アイーダ」を観て来ました。
何といっても、オペラ会の大横綱・ヴェルディの音楽の素晴らしさに圧倒されます。
今やオペラ会の大スターのアンナ・ネトレプコのアイーダを始め、豪華キャストの歌唱力、演技、合唱、ダンスには、大満足でした。そして豪勢な舞台装置は古代のエジプトのイメージそのままで、オペラの醍醐味を存分に味わうことだ出来ました。
矢張り、オペラは素晴らしいですね!

私の手持ちの「アイーダ」のディスクは数えてみると14種類にも及びますので、このオペラは熟知している積りでしたが、この演出とキャスト、歌の迫力には痺れてしまいました。
そして、昔始めて「アイーダ」を見た時を思い出したりもしました。

それは、1961年ですから、50年以上も前のことです。61年に来日したイタリア・オペラで東京文化会館でしたが、最近物忘れがひどい私ですが、未だにキャストやシ-ンが思い出されるのです。指揮者はモレルリ、キャストは、アイーダがトゥッチ、ラダメスがあの名歌手、マリオ・デル・モナコで、シミオナート、、プロッティの名唱も眼と耳に甦っで来ます。
50年以上も前のシーンを覚えていることは、当時、貧乏サラリーマンが大金をはたいて観に行った値打ちは十分あったとうことでしょう。

その時の第2幕でのエジプト人の踊りを舞った貝谷八百子舞踊団の衣装が珍しくて印象的でした。
後年、エジプトに行った時、カイロ郊外のギザのピラミッドの回廊の壁画に描かれていた衣装を見て、「アッ、これだ!」と、アイーダ2幕の衣装の実態が判ったのでした。

そんな訳で、今シーズンもあと何回かメトのオペラ映画を見に行くことになりそうです。


(平成30年11月8日)